303 余は如何にして安藤美姫ファンとなりし乎・下

トリノ五輪エキシビション

村主章枝は「キダム」で仕掛け入りボールを使った演技。観客と絡みながらの「村主ワールド」全開のプログラムだった。自分の中の村主のイメージは今でもあの時の独特な、静かでありながらケレンみたっぷりのイメージだ。
……よもや6年経った今なお現役選手継続中とは、どこまでも想像を超越する人である。ここまできたら行けるところまで突っ走ってほしい気もする。

そして女子シングル金メダリスト・荒川静香の「You raise me up」。

本当に美しかった。

競技終えてから取材が続き、睡眠時間もあまりとれてない状況だったはずなのに、疲れを感じさせない情感溢れる美しい演技だった。神々しいとはこのことだと今でも思う。
あの青い衣装がまた良かった。
その後の荒川の演技は数々見ているけれど、あの衣装の「You raise me up」が一番好きだ。たぶんトリノ五輪版「トゥーランドット」よりも。

男子シングル金メダリストのプルシェンコ(ロシア)がヴァイオリニストのマートンと共演したEX版「トスカ」でいろいろ全部持っていって(笑)、トリノ五輪は幕を閉じた。

バンクーバー五輪の時は十分にスケートファンだったし、かなり力を入れて見ていた。なのに自分の中では意外なほど印象が薄い。
ごく一般的目線で見ていたトリノ五輪の方がはるかに印象に残ってる。
トリノ五輪はそれだけインパクトが強かったんだろう。

そしてトリノ五輪から4カ月経って、夏のDreams on Ice。
これは前季活躍したり、今後の活躍が期待される日本の上位選手によるエキシビションだ。

安藤美姫はこの時「I believe」を演じた。グレーと白のグラデーションの衣装に、下ろしてリボンをつけた髪。
ストレートラインステップの前にちょっと止まってポーズをとる。この時安藤はニッコリ笑って、グイグイとステップを踏んでいった。
自分は新横浜のリンクの南席に座っていて、この笑顔と、ステップで遠ざかっていく安藤の背中を見て、笑顔のスパイラルを見た。
なんだかとても嬉しくなって、感動した。
この時に本当に安藤の「ファン」になったんだと思う。

——あれから6年。
そんなふうにして、今の自分があるわけです(´∀`)。